お知らせ
郡役所のこと
旧八女郡役所は、八女福島の古い町並みから少し南にある大きな木造の建物です。その名のとおり、明治20年代から大正2年まで八女郡役所という八女地方の行政の中心の建物でした。その後、服部木蝋商店、銃弾製造工場、服部飼料店と、時代とともに使われ方が変化し、平成8年から空き家になっていたものを平成22年に私たちNPO法人 八女空き家再生スイッチが譲り受けました。平成27 年に改修を始め、多くの人たちのご支援を頂きながら、平成29年3月ようやく部分的に営業を始められるようになりました。
“まちの公園”のような場所へ
これから、郡役所や木蝋工場時代の遺構を尊重しながら、建物の修理を進め、周囲に植樹し、花壇や畑も作り、緑あふれる居心地のよい場所にしていく予定です。建物の中には、様々な人が交流できるkitorasu(キトラス)と、天井の太い梁組みが印象的でイベントなどに活用できる大きなホールがあります。kitorasuやホールに、畑や木陰に、みんながつどい、話をしたり、お茶を飲んだり、音楽を聴いたり、木を植えたり、野菜を育てたり、土壁を塗ったりしながら、この旧八女郡役所が木立に囲まれた“まちの公園”として、心地よい時間を過ごすことができる場所になるよう、少しずつ育てていけたらと願っています。
施設案内
訪れる人にとって「公園のような憩いの場所」となるよう、他に仕事を持つ町の人々が手探りで運営していきます。
大きなホール
旧八女郡役所の建物で最も印象的な場所がこのホールです。南北方向25m×東西方向に10m ほどの面積がある大空間で、中央に太い柱が2 本ずつ並び、その上に太い梁が3段に重なり和小屋を構成しています。様々なイベントや展示などで活用できる場所だと思いますが、まず一年間を目処に様々な使い方を試してみたいと思っていて、この場所の可能性を探ってみるつもりです。使用をご希望の方は当法人までお尋ね下さい。
八女の地酒 繁桝を取り扱う酒屋さん。記録映画の上映会場、NPOの集会所、私設観光案内所的場所など、時と場合によって変わります。
営業日時:10:00〜19:00(不定休)
http://blog.livedoor.jp/asahiyayame/
0943-23-0924
空き室
今回の修理で、全く手を入れられなかった北東側の空間ですが、改修して借りたい方がいらっしゃれば話を進めたいと思います。ご関心のある方、お問い合わせください。
建物と歴史
建物の特徴
平面は、寄せ棟桟瓦葺のT字型の鉤屋で、北側の東西に棟が走る屋根(北むね)の中央から南側へ南北に棟が走る屋根(南むね)が突き出した外観となっています。元々は北側の旧往還道より入り込む形で、玄関は北側下屋中央に設けられていたようです。
北むねの上屋は梁間5間(約9.6m)、桁行き10間(約19m)で、北側に半間、東側と西側に1間の下屋を架け下ろしています。さらに後の増築により、建物南西部分に瓦を架け下ろす形の屋根が特徴的です。鬼瓦には「福」と文字が刻まれており、おそらく福岡県の福を表していると考えられます(瓦を葺き替えた際に、屋根より下ろし保管しています)。
外壁は下見板張りの大壁造りと焼杉板張りでした。窓は木製の引き違いが基本で、西側と東側の窓は外側に木製格子を建て、上部には欄間がとられています。
現状で見られる形は、痕跡調査から、軍需工場になった時に大きく改変されたことが分かっています。基礎は丸石の礎石で、基礎の周囲に2〜7段の玉石布積みが見つかりました。
由緒・歴史
服部飼料店として地元で愛されたこの建物は、もともとは明治時代に八女郡の郡役所として建てられました。平成23年の学術調査によると、明治20年代に民間が建築、県に賃貸し役所として使用されたものと思われる、とあります。
明治中期から戦前にかけての八女地方では江戸期に醸成された産業や文化が花開き、都市や山村の基盤が充実していきました。その礎になったのが、当時の郡長田中慶介が作成した八女郡是や各地域の町村是で、その舞台となったのが八女郡役所でした。
郡役所が大正2年に別の場所に新築移転した後、服部木蝋工場、戦時中の銃弾製造工場、戦後の集合住宅、服部飼料店へと形態を変えながら、増改築を加えられ現在のような形になっています。(→変遷の図を表示)
(写真は服部飼料店の頃。都市計画道路の整備にともなって破風は撤去されています)
明治11年 | 上妻郡、下妻郡設置。堀江三尚初代郡長となる。 |
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明治20年代 | 現在の旧八女郡役所の場所に上妻下妻郡役所を建築。 |
明治29年 | 上妻郡と下妻郡が合併し八女郡になり、上妻下妻郡役所を八女郡役所に改称。初代郡長宮本三五郎。 |
明治30年 | 田中慶介郡長となる。 |
明治31年 | 町村是「調査着手ノ義」を訓令。八女郡内各学校長に「学校沿革史」の調整を訓示。 |
明治32年 | 「福岡縣八女郡是」調査完了 |
大正2年 | 八女郡役所が大正町に移転。 |
大正末から昭和初期 | 服部萬吉氏が取得し、服部木蝋商店の製蝋工場として大改修。玄関の位置が北から南側に変更。 |
昭和19年頃 | 銃弾製造工場として利用。この頃、床が撤去される。 |
昭和20年頃 | 戦後の住宅不足から複数の家族が住む |
昭和33年〜45年頃 | 服部飼料店。 |
昭和45年頃〜平成8年 | 住宅として使用。 |
平成8年 | 空き家になる。 |
平成18年 | 当法人が旧八女郡役所の敷地及び家屋の所有者より相談を受ける |
平成21年 | 当法人(当時NPO 法人八女文化振興機構)より市長に対し「旧八女郡役所の保存活用の要望書」提出。 |
平成22年 | 旧八女郡役所の建物を所有者から当法人に寄付 |
平成23年 | 当法人より市長に対し「旧八女郡役所の保存再生活動支援の要望書」を提出。当法人が敷地の所有者2名と長期管理委託契約を締結。 |
平成24年 | 八女福島の町並み保存を記録した映画「まちや紳士録」が完成 |
平成25年〜26年 | 旧八女郡役所再生を見据えた空き家利活用の勉強会「空き家再生スイッチ」を計3回開催 |
平成26年 | 旧八女郡役所ミテ・シル市を開催し、建物を一般公開 |
平成27年 | 旧八女郡役所の建物修理を開始 |
平成28年 | ハウジングアンドコミュニティ財団すまいとコミュニティづくり活動助成、八女市空き家再生・活用モデル事業、大成建設自然環境・歴史基金助成事業の助成が決定。旧八女郡役所の敷地を所有者2名より八女市に寄付。 |
平成29年 | 旧八女郡役所オープン(ホール、朝日屋酒店、kitorasu) |
旧八女郡役所は伝建地区でも一際目を引く印象的な瓦屋根の大きな建物でした。
空き家になって10 数年経ち、瓦屋根がずり落ち屋根に穴が開き、土壁が剥げ、風雨による痛みが年々ひどくなっていました。一方で、微妙に風合いの違う瓦が重なる屋根の表情や大きな梁が連なる小屋組と広い空間に流れる静謐で緊張感のある空気は魅力あるもので、それだけでもこの建物を残したいと思わせる力がありました。
修理するなら1億円以上掛かると言われ、その資金調達や回収計画を考えるだけで、大きな事業とは縁のない私たちは気が遠くなるばかりでした。国の重要伝統的建造物群保存地区にある建物ですので、修理には国や市の補助が受けられますが、上限は960 万円(同80%が上限)。大規模な建物だからということで3棟分出るかもしれないという話もありましたが、それでも手出しが7,000万円以上。さらに大規模改修となると建築基準法の遡求適用も受けることになるため、様々な部分で修理費がかさむことになります。そういう修理で残った建物は私たちがイメージするものとは全く違うものになるようにも思えました。
そこで、まずは危険な箇所の修理を行い最低限安全に建物の使用ができるように応急措置をして、あとは使いながら修理をし、活用を考えることにしました。とはいっても最低限の修理にもそれなりの資金が必要です。最初に考えたのは、改修後に入店する店に支払ってもらう前払い家賃で修理をすることです。それで大工さんに相談をし、修理を始めることにしました。それに加え、当法人への会費や私たちの活動を応援して下さる方々からの寄付金などの資金をはじめ、「ハウジングアンドコミュニティ財団住まいとコミュニティづくり活動」助成、「大成建設自然環境・歴史基金」助成事業、「八女市空き家再生・活用モデル事業」のような助成をいただき、簡単な修理や片付けのように自分たちでも出来そうな部分は様々な方々の支援を受けてDIY で行う、といった具合で多くの人たちの関係性の中で何とか今回の修理を行うことが出来ました。
修理したのは、屋根瓦(魅力ある古瓦の屋根が変わってしまったのは残念ですが、痛みもひどかったため仕方ありません)と全体の壁、傷んで使えなくなった建具などです。キトラス部分には床を貼り厨房やトイレも設置し交流できるような場所を作り、小屋組に照明を設置し、夜でもこの建物の持つ雰囲気が味わえるようにしています。
改修工事が進む中で特筆すべきことがありました。かねてから所有者が希望していた敷地の寄付のことです。外観改修が進み全貌が明らかになっていくと、当法人の活動を支援できると判断した八女市が、その受入れを決定したのです。個人が所有する活用の目処の立たない空き家を再生・活用する際に、土地は市が、建物はNPO 法人が寄付を受入れ、官民共同で再生・活用を行なっていく、八女福島の景観・文化を守り継承していく上での新しい事例になるのではないでしょうか。
とはいえ、旧八女郡役所の再生はまだまだ始まったばかりで、建物内部、東側部分と東棟の修理に加え、敷地の整備も全く手付かずです。旧八女郡役所や製蝋工場などの歴史とこれまで守ってこられた人たちのおもいを大切にし、地元の人たちや支援して下さる方と一緒にまちの公園のような場所に育てていければと願っています。20 年くらい経ったときに、(もっと先になるかもしれませんが)、ああ良い空間になってきたね、もっと使っていきたいね、というように一人ひとりが言ってくれることを目指して日々活動していければと思っています。
アクセス
JR 羽犬塚駅から堀川バス乗車、八女学院前下車、徒歩10分
西鉄久留米駅から西鉄バス八女福島行き乗車、福島バス停下車、徒歩10分
八女IC から車で約10分
敷地北側に駐車場があります。また、近くに観光案内所の駐車場もあります。
イベント時は駐車できない場合もあります。
運営団体
特定非営利活動法人 『八女空き家再生スイッチ』の紹介
私たちは、八女福島の歴史的町並みを中心に、伝統家屋の空き家再生や活用を目的に活動しています。また、活動をとおして生まれる沢山の人達とのつながりや、空き家だった建物を新しく住み継ぎ・商いをしてくださることで、この魅力的な町並みを後世に引き継ぐことができると考えています。これからも旧八女郡役所を中心に活動を継続していきます。
正会員として一緒に活動してくださる方や、活動を支えてくださる賛助会員や寄付金も募集しています。
所在地:〒834-0031八女市本町2-105 旧八女郡役所内
理事長:高橋康太郎(たかはしこうたろう)
会員数:101 名(理事5 名、正会員23 名)*2016 年3 月現在
設立:2003(H15)年2 月(同年7 月11 日法人登記)(2015 年9 月法人名称変更)
年会費:5,000 円(正会員)、3,000 円(賛助会員)
会員加入方法:郵便振替口座にお振込の上、上記番号にお電話いただくか、
info@gunyakusho.com 宛に、氏名・住所・ご連絡先をご記入の上、送信ください
記号番号:01770-2-166771
口座名義:特定非営利活動法人 八女空き家再生スイッチ トクヒ)ヤメアキヤサイセイスイッチ